会社のロゴを作り直したい。創業から使っているものが古く見えてきた。あるいは会社を立ち上げたので、これから作らなければいけない——。

ロゴは、一度作ると10年、20年と使い続けるものです。そのわりに、作る機会は人生で数えるほどしかありません。だから「何をどう決めればいいのか」が分からないまま、見た目の好みだけで選んでしまうことが起こります。

この記事は、ロゴを作る人ではなく、依頼する人のための記事です。デザインソフトの使い方は扱いません。ロゴが何のためにあるのか、どんな形式があるのか、何をやってはいけないのか、依頼する前に何を決めておけばいいのかを整理しました。

イラストとデザインを手がけている私たちアークデザインが、実際に制作したロゴを例に解説します。

会社のロゴは何のためにあるのか

覚えてもらうための記号

ロゴのいちばんの役割は、思い出してもらうことです。

社名を文字で読むより、形と色で見たほうが、人は速く認識します。名刺、看板、封筒、車両、Webサイト——会社が人目に触れるすべての場面に同じ記号が出ていれば、接触のたびに記憶が積み上がります。

逆に、媒体ごとに違う見た目を使っていると、同じ回数見られても記憶に残りません。ロゴは「統一する」ことで初めて効きます。

選ぶ理由を後押しする

はじめて取引を検討する相手にとって、その会社が信頼できるかどうかを判断する材料は多くありません。

きちんと作られたロゴがあるかどうかは、判断材料のひとつになります。 「見た目に手間をかけている=仕事にも手間をかけるだろう」という推測が働くためです。

これは論理的とは言えませんが、実際に起きています。とくにBtoBで、相手が自社を知らない場面では効きます。

社内に向けても働く

見落とされがちですが、ロゴは社外だけのものではありません。

名刺に入ったロゴ、制服に入ったロゴ、社内資料の隅にあるロゴ。「自分はここの一員だ」という感覚を日常的に補強します。

創業のタイミングや、事業の方向を変えるタイミングでロゴを作り直す会社が多いのは、社内の気持ちを切り替える装置としても働くからです。

「かっこいいロゴ」とは何か

ご相談でいちばん多いご要望が「かっこいいロゴにしてほしい」です。

気持ちはよく分かります。ただ、この言葉は人によって指すものがまったく違います。同じ「かっこいい」でも、無骨で力強いものを思い浮かべる方と、洗練されて余白の多いものを思い浮かべる方がいます。

そこで、主観を外して整理すると、かっこいいと感じられるロゴには共通点があります。

① 形がシンプルで、覚えられる

一度見て、目を閉じて思い出せるか。要素が少ないほど、記憶に残ります。

複雑で情報量の多いロゴは、作っているときは充実して見えますが、見る側の記憶には残りません。削れるだけ削ったものが、結果としてかっこよく見えます。

② 事業の中身と合っている

見た目だけ洗練されていても、中身とずれていると違和感になります。

重厚な事業に軽やかすぎるロゴ、親しみが必要な店舗に硬すぎるロゴ。これは「かっこ悪い」というより「合っていない」と受け取られます。かっこよさは、中身との一致から生まれます。

③ 10年後も古びない

作った年の流行に乗ったものは、数年で古く見えます。 逆に、流行から距離を置いたものは古びません。

長く使われている会社のロゴを見ると、驚くほど素っ気ない形をしていることに気づきます。それが10年、20年と使われた結果、かっこよく見えるようになっています。

つまり「かっこいい会社ロゴ」を目指すなら、奇をてらうのではなく、シンプルにして、中身と合わせて、流行から離すのが近道です。

ロゴの3つの形式

ロゴの3つの形式。文字だけのロゴタイプ、図だけのシンボルマーク、図と文字の組み合わせ型。知られていない会社が図だけを使うと伝わらないため、組み合わせ型が現実的

ロゴは、大きく3つの形に分けられます。どれが優れているという話ではなく、会社の状況によって向き不向きがあります。

① ロゴタイプ(文字だけ)

社名の文字そのものをデザインしたものです。

向いている 社名を覚えてもらいたい/社名が短い/事業内容が幅広く、図で表しにくい
弱点 社名が長いと小さく使えない/文字だけなので印象が弱くなりやすい

社名を知ってもらうことが最優先の会社には、これが確実です。図を挟まないぶん、読み間違いも起きません。

② シンボルマーク(図だけ)

社名を含まない、図形だけのマークです。

向いている すでに名前が知られている/小さく使う場面が多い/海外でも使う
弱点 知られていない会社が単体で使うと、何の会社か伝わらない

有名企業が図だけのマークを使えるのは、すでに社名と図が結びついているからです。これから知ってもらう段階の会社が同じことをすると、伝わりません。

③ 組み合わせ型(図+文字)

シンボルマークと社名を組み合わせた形です。多くの会社にとって、もっとも現実的な選択肢です。

普段は組み合わせで使い、小さく使う場面や、すでに社名が出ている場面では図だけを使う——という運用ができます。1つ作れば2通りに使えるのが強みです。

KICK FIT by ZOOMER様のロゴ。キックを繰り出すサルのキャラクターと社名を組み合わせた形式

私たちが制作した、KICK FIT by ZOOMER様のロゴです。キックボクシングのジムという事業内容が、キャラクターの動きで一目で伝わるようにしました。

キャラクターを使うと、ロゴがそのままSNSのアイコンやグッズに展開できます。 図形だけのマークより親しみやすく、シリーズで育てていけるのも利点です。キャラクター自体の作り方は企業キャラクターの記事にまとめています。

④ もうひとつの選択肢:書文字

3つの形式とは別に、筆で書いた文字をロゴにするという選び方があります。

鉄板屋大吉様のロゴ。筆で書いた書文字を使い、看板に展開している

鉄板屋大吉様のロゴです。書文字は、フォントを加工したものとは線の勢いが違います。 同じ字面でも一度きりの筆致になるため、他社と重なりません。

飲食店、和の要素を持つ事業、創業の長い会社などで効きます。看板やのれん、包装にそのまま展開できるのも特徴です。私たちは書文字も社内で手がけています。

ロゴでやってはいけない5つのこと

作り直しになる原因は、だいたい決まっています。

ロゴでやってはいけない5つのこと。小さくすると潰れる、1色で成立しない、流行に寄せすぎる、使い方のルールが無い、既存のロゴと似る。それぞれの対策つき

① 小さくすると潰れる

いちばん多い失敗です。

パソコンの画面で見ているときは美しくても、名刺の隅やスマートフォンのアイコンサイズに縮めると、細い線が消え、要素が団子になります。

設計の段階で、いちばん小さく使われる場面を決めておく必要があります。名刺なのか、Webのファビコンなのか、ペン1本に印刷するのか。ここが決まっていれば、その大きさで成立する線の太さにできます。

② 1色で成立しない

グラデーションや多色で作ったロゴは、次の場面で困ります。

  • 新聞広告やFAX用紙(モノクロ)
  • 刺繍やスタンプ(単色)
  • 商品に刻印する場合(形だけ)

カラー版・1色版・白抜き版の3つで成立するかを、作る段階で確認します。ここを見ていないと、あとで別の会社に作り直しを頼むことになります。

③ 流行の意匠に寄せすぎる

ロゴは10年以上使います。作った年の流行に寄せると、5年で古く見えます。

近年でいえば、極端に細い線、特定のグラデーション、流行のフォントをそのまま使う——といったものです。「今おしゃれに見えるか」ではなく、「10年後に古く見えないか」で判断します。

④ 使い方のルールを決めていない

ロゴそのものより、運用で崩れるケースが多くあります。

  • 社員が資料に貼るときに縦横比を変えてしまう
  • 背景の色によって見えなくなる
  • 勝手に色を変えて使われる

これを防ぐため、最低限の使い方のルール(余白、最小サイズ、使ってよい色、やってはいけない例)を、ロゴと一緒に決めておきます。

⑤ 既存のロゴと似てしまう

意図せず他社と似てしまうことがあります。とくに業種を象徴する図形(建設なら家、医療なら十字)は、発想が重なりやすい領域です。

制作の段階で確認はしますが、商標として使うかどうかは会社側の判断になります。本格的に権利を押さえたい場合は、専門家への相談をおすすめします。

作り方の流れ(発注者が関わるところ)

ロゴ制作は1ヒアリング・方向性の決定、2ラフ提案の確認、3仕上げ・データ一式の納品の3段階。発注者が関わるのは1と2で、大きな方向転換ができるのは2まで

発注側の出番は①と②です。

① ヒアリング・方向性の決定 ←発注者の出番

何をしている会社か、誰に向けた会社か、どんな印象を持ってほしいかをうかがいます。

ここで制作側が代わりに決められないのは、次の2つだけです。

  • 誰に向けた会社なのか
  • どんな印象を持ってほしいのか

形式(文字だけか、図を入れるか)や色は、この2つが決まっていれば提案できます。

「かっこよく」「おしゃれに」というご要望はよくいただきますが、その言葉が指すものは人によってまったく違います。 参考にしたいロゴを2〜3点挙げていただけると、認識のずれがなくなります。

② ラフ提案の確認 ←発注者の出番

複数の方向性を、簡単な形で見ていただきます。

ここで見るのは完成度ではなく方向です。

  • 事業の中身と合っているか
  • 社内で反対が出そうな要素はないか
  • 10年後も使えそうか

大きな方向転換ができるのは、この段階までです。 仕上げに入ってから別案に切り替えると、実質的に最初からやり直しになります。

社内の意見はこの段階で集めておくことをおすすめします。仕上がってから役員の意見が出て振り出しに戻る、というのはよくある展開です。

③ 仕上げ・データ一式の納品

線を整え、色を決め、使用するデータ一式をお渡しします。

データ 用途
ベクターデータ(ai / eps / svg) 看板、印刷物。拡大しても劣化しない
画像データ(png / jpg) Web、資料
1色版・白抜き版 モノクロ印刷、刺繍、刻印
使い方のルール 社内での運用

ベクターデータは必ず受け取ってください。 これが無いと、大きな看板を作るときに作り直しになります。

依頼する前に決めておくこと

何に使うか(最小サイズと展開先)

前述のとおり、いちばん小さく使う場面が設計を決めます。

使う予定のものを挙げてください。名刺、封筒、看板、Webサイト、車両、制服、ノベルティ——多めに挙げておいて損はありません。看板や印刷物まで含めてご相談いただくこともできます(印刷・出力のページ)。

社名の表記を確定させる

意外と多いのが、社名の表記が固まっていないまま制作に入るケースです。

  • 「株式会社」を前に置くか後ろに置くか、ロゴに入れるか
  • 英語表記を併記するか、そのつづり
  • 大文字か小文字か、中黒や長音の有無

ロゴは文字を図として組むので、1文字変わると全体を組み直します。 ここだけは先に確定させてください。

ロゴを作り直すべきタイミング

「まだ使えるが、そろそろかもしれない」と迷っている場合の目安です。

こういうときは検討する 理由
事業の中身が変わった ロゴが古い事業を指したままになる
小さく使う場面で潰れている Webやアプリが増えた結果、当初の想定と使い方が変わった
元データが手元にない 看板や大判印刷を作れない。これは緊急度が高い
社内で誰も使い方を把握していない 資料ごとに見た目が違う状態になっている
創業から20年以上、一度も見直していない 単純に時代とずれている可能性がある

とくに3つ目は放置しないでください。 画像データしか残っていないと、大きく引き伸ばした瞬間に輪郭がぼやけます。「ロゴを作り直したい」というご相談の一定数は、元データの紛失がきっかけです。

逆に、「なんとなく飽きた」だけなら作り直す必要はありません。 ロゴは見慣れられてからが本番です。作った側が飽きる頃に、ようやく世の中に覚えられ始めます。

CI・VI・周年ロゴとの関係

ロゴの話をしていると、関連する言葉が出てきます。混同しやすいので整理します。

言葉 指すもの
ロゴ 会社を表す記号そのもの
VI(ビジュアルアイデンティティ) ロゴを含む、見た目全体のルール(色、書体、写真の使い方など)
CI(コーポレートアイデンティティ) 理念や行動指針まで含む、会社のあり方全体
周年ロゴ 創業◯周年など、期間限定で使う別のロゴ

通常のロゴは長く使い続けるもの、周年ロゴはその年だけのものという違いがあります。周年ロゴについては周年ロゴの記事で詳しく解説しています。

会社全体の見せ方から整理したい場合は、ブランディング・企画デザインのページもあわせてご覧ください。

まとめ

  • ロゴの役割は「思い出してもらうこと」。 統一して使って初めて効く
  • 形式は3つ。 知られていない会社が図だけのマークを使うと伝わらない。組み合わせ型が現実的
  • やってはいけないのは5つ。 とくに「小さくすると潰れる」「1色で成立しない」は作り直しの原因になる
  • 発注側が決めるのは「誰に向けた会社か」「どんな印象を持ってほしいか」だけでよい
  • 社名の表記だけは、依頼前に確定させる
  • 「かっこいい」は、シンプルにして中身と合わせた結果として生まれる

私たちアークデザインは、ロゴの制作から、名刺・看板・印刷物への展開までお引き受けしています。社内にイラストレーターと書文字の書き手が在籍しているため、キャラクターを組み込んだロゴや、筆文字のロゴといった選択肢もご提案できます。

これまでの制作事例はロゴの実績一覧でご覧いただけます。「作り直すべきか迷っている」という段階からで構いませんので、お気軽にご相談ください。