会社案内を作り直したい。でも、事業内容を文章で書くと固い。写真を並べても、伝えたいことの半分も伝わらない。展示会で配ったパンフレットが、そのまま会場のゴミ箱に入っているのを見たことがある——。

そういうときに「マンガにしてみようか」という話が出てきます。

ところが、いざ検討を始めると分からないことばかりです。何ページ必要なのか。ストーリーは自分たちで考えるのか。いくらかかるのか。そもそも、どんなものが出来上がるのか。

この記事は、マンガを描く人ではなく、マンガ制作を依頼する人のための記事です。ペン入れやトーンの技法は扱いません。何を決めておけばよいのか、どう進むのか、費用はどう決まるのか、そして完成した漫画をそのあとどう使うのかを整理しました。

イラストとデザインを手がけている私たちアークデザインは、お客様の漫画を制作してきただけでなく、自社の会社案内パンフレットも漫画で作っています。 依頼する側の迷いも、作る側の事情も、どちらも経験したうえで書きました。

マンガ制作を依頼するとき、依頼する側が決めるのは「誰が読むのか」「読んだあとどうなってほしいのか」の2つ。ストーリー・キャラクター・コマ割り・絵のタッチ・ページ数は制作側が組み立てる

マンガをPRに使うと、何が変わるのか

文章では読まれない情報が、最後まで読まれる

パンフレットやWebページを作るとき、いちばんの壁は「読んでもらえないこと」です。

どれだけ内容を練っても、文章のかたまりは飛ばされます。見出しだけ眺めて、次のページに進まれてしまう。これはよくあることです。

マンガが強いのは、読み始めたら最後まで読まれやすいという点です。登場人物がいて、会話があって、話が前に進む。読み手は「次のコマ」を追いかけます。同じ情報量でも、文章なら3行で離脱されるところが、マンガなら4ページ読み切ってもらえる、ということが起こります。

伝わりにくい商品・サービスほど向いている

マンガが特に効くのは、言葉で説明すると長くなるものです。

  • 仕組みが複雑で、図を出しても分かりにくいサービス
  • 使ってみないと良さが伝わらない商品
  • 導入までの流れが長く、説明に時間がかかるもの
  • 「なぜこの会社を選ぶのか」という、感情が関わる判断

たとえば「当社は創業から地域密着で事業を続けてきました」と書くより、創業者が地域の人に助けられた場面を1ページの漫画にするほうが、読んだ人の記憶に残ります。

採用の場面でも同じです。仕事内容を箇条書きにするより、先輩社員の1日を漫画にしたほうが、働くイメージが伝わります。採用ツール全体の考え方は採用パンフレットの作り方の記事にまとめていますので、あわせてご覧ください。

向いていないケースもある

正直にお伝えすると、マンガにしないほうがよい場合もあります。

こういうときは向かない 理由
伝えたいことが1つだけで、短い 1行のキャッチコピーで足りる。漫画にすると冗長になる
正確な数値やスペックを読ませたい 表やグラフのほうが速い
急ぎで、1〜2週間しかない ストーリー設計から作画まで、通常1か月前後かかる
何を伝えたいかが、まだ社内で固まっていない 漫画は「筋」が決まらないと1コマも描けない

とくに最後の項目は重要です。マンガは伝えたいことを1本の話に絞る表現です。言いたいことが5つあると、どれも印象に残りません。逆にいえば、依頼を検討する過程で「結局いちばん伝えたいことは何か」がはっきりするという副産物もあります。

マンガ制作で作れるものの種類

ひとくちに「マンガ制作」といっても、掲載する場所によって、作るものの形はまったく変わります。

漫画を組み込んだ会社紹介パンフレットの紙面。見開きに4コマ漫画が入り、表紙にキャラクターイラストが使われている

会社案内・採用パンフレットに載せる漫画

冊子の中に4〜8ページほどの漫画を入れる形です。もっとも多いパターンです。

会社の成り立ち、事業の流れ、働く人の1日といった「説明すると長くなるもの」を担当させ、数値やサービス一覧は通常のページに任せます。冊子全体を漫画にする必要はありません。

ただし、紙面そのものを漫画の場にするやり方もあります。私たちが手がけた格闘道場ALIVE様の8つ折りパンフレットは、片面をまるごと漫画にし、もう片面に料金表とスケジュールを置きました(この記事の後半で紹介します)。

チラシ・DM・店頭POPに載せる漫画

1ページ、あるいは3〜4コマの小さな漫画です。

紙面が狭いぶん、伝えられることは1つに絞られます。「この商品を使うと、こう変わる」「この悩みは、こうやって解決できる」というビフォーアフターの型が収まりやすいです。

Web・SNS・広告用の漫画

縦スクロールで読ませる形や、SNSに投稿する4コマなど、掲載先に合わせた作り方をします。

紙と違い、1コマずつ拡大して読まれることを前提に、文字の大きさやコマの配置を変える必要があります。紙面用に作った漫画をそのままWebに載せると、スマートフォンでは文字が読めない、ということが起こります。

動きをつけたい場合は、漫画ではなくモーショングラフィックスアニメーション動画のほうが向いていることもあります。

依頼する前に決めておくこと

制作会社に相談する前に、次の3つだけ決まっていると、話が早く進みます。逆にいえば、この3つ以外は決まっていなくて大丈夫です。

誰に何を伝えたいか(ここだけは発注側が決める)

制作会社が代わりに決められないのは、ここだけです。

  • 誰が読むのか(取引先の担当者/就職活動中の学生/来店したお客様/既存のお客様)
  • 読んだあと、どうなってほしいのか(問い合わせてほしい/説明会に来てほしい/商品を手に取ってほしい)

この2つが決まっていれば、ストーリーもキャラクターも、制作側で組み立てられます。

よくあるのは「とにかく会社の魅力を伝えたい」というご相談です。気持ちは分かるのですが、読む人が決まらないと、話の筋が決まりません。 学生に向けた漫画と、取引先に向けた漫画では、主人公から変わります。

掲載先とページ数・コマ数

どこに載せるかが決まれば、必要なページ数はおのずと決まります。

掲載先 よくある分量
会社案内・採用パンフレットの一部 4〜8ページ
冊子まるごと 12〜24ページ
チラシ・DM 1ページ、または3〜4コマ
Web・SNS 4〜8コマ(縦スクロール)

ページ数は費用に直結します。決まっていない場合は、「このパンフレットのこの見開きに入れたい」という形でご相談いただければ、こちらで割り出せます。

絵のタッチ

リアルな絵柄、親しみやすい絵柄、シンプルな線画——タッチによって印象は大きく変わります。

決めきれない場合は、「こういう雰囲気にしたい」という参考イメージを1〜2点お持ちいただければ十分です。私たちのように複数のイラストレーターが在籍している会社であれば、ご希望の雰囲気に近い描き手を立てられます。

リアルな描き込みのモノクロ漫画。格闘技道場の施設を案内していく構成
動物のキャラクターが登場するカラーの4コマ漫画。親しみやすいタッチ

制作の流れ(発注者が関わるところ)

制作会社によって呼び方は違いますが、おおむね次の5段階で進みます。発注側の出番は②と③に集中します。

マンガ制作の流れは1ヒアリング・お見積り、2構成・シナリオの確認、3ネームの確認、4作画・仕上げ、5紙面デザイン・印刷手配の5段階。発注者が関わるのは2と3で、ストーリー変更ができるのは3のネームまで

①ヒアリング・お見積り

伝えたいこと、読む人、掲載先、希望の分量をうかがいます。この段階で概算のお見積りが出ます。

参考資料(既存のパンフレット、会社の沿革、商品資料など)があれば、この時点でお渡しいただくと精度が上がります。

②構成・シナリオの確認 ←発注者の出番

話の筋とセリフを文章に起こした「シナリオ」を確認していただきます。

ここで見るべきなのは、絵ではなく「話の運び」です。

  • 伝えたいことが、最後まで読んで残るか
  • 実際の商品・サービスの説明として、事実と違っていないか
  • 登場人物の言動に、業界として不自然な点がないか

とくに3つ目は、発注側にしか分からない部分です。制作側は取材した内容をもとに書きますが、現場の細かい言い回しや業務の順序までは分かりません。ここで直していただくと、後の手戻りがなくなります。

③ネームの確認 ←修正はここまで

「ネーム」とは、コマ割りとセリフの配置を簡単な線画で示した設計図です。完成品の下書き、と考えていただくと近いです。

ストーリーの変更や、キャラクターの作り替えができるのは、この段階までです。

ネームの次は作画に入ります。ペン入れが済んだあとで「この場面を前に持ってきたい」となると、実質的に描き直しになり、追加の費用と時間が発生します。これは制作会社を問わず共通で、業界各社が同様に案内しています。

面倒に感じられるかもしれませんが、ネームをじっくり見ていただくことが、結果的にいちばん早く仕上がる方法です。

④作画・仕上げ

線画、ベタ、トーン(またはカラーの着彩)と進み、漫画として完成させます。ここは制作側の作業です。

⑤紙面デザイン・印刷手配 ←ここを持っている会社は少ない

完成した漫画を、実際の冊子やチラシに組み込む工程です。

漫画のページと、それ以外のページ(表紙、会社概要、商品一覧など)を同じ世界観でまとめる必要があります。漫画だけが浮いてしまうと、せっかくの効果が薄れます。

漫画制作を専門にしている会社の多くは、漫画のデータ納品までが範囲です。そこから先の紙面デザインは、別の会社に頼むことになります。

私たちはデザイン会社なので、漫画も、その前後のページも、同じ手で作れます。 そのうえで印刷は、内容に合った協力工場へこちらから手配します。発注いただく窓口は1つのままなので、やりとりの手間と、間に入る調整が減ります。

費用の考え方

費用が決まる4つの要素

マンガ制作の費用を決める4つの要素。ページ数が最も大きく効き、1〜2ページと21ページ以上では1ページあたり54,000円と36,000円の差が出る。カラーはモノクロの約1.2倍

1. ページ数

もっとも大きく効きます。そしてページ数が増えるほど、1ページあたりの単価は下がります。

たとえばJOBコミ社の公開料金表では、シナリオ・ネームと作画(モノクロ)を合わせた1ページあたりの金額が、1〜2ページなら54,000円、5〜12ページなら45,000円、21ページ以上なら36,000円と段階的に下がります(いずれも税抜。同社公開の料金ページより)。

「4ページで検討していたが、6ページにすると1ページあたりは安くなる」ということが起こります。

2. モノクロかカラーか

カラーはモノクロより高くなります。同社の料金表では、作画の単価がモノクロ25,000円に対しカラー30,000円(5〜12ページの場合)と、約1.2倍です。

3. 絵のタッチ

描き込みの量が多いほど、制作時間がかかります。

4. 使用範囲

Webだけで使うのか、印刷物にも使うのか、期間の制限はあるのか。著作権の扱いも含め、契約時に決めます。

相場のまとめ

複数社の公開情報を並べると、おおむね次のレンジに収まります。

項目 目安
1ページあたり(シナリオ込み・モノクロ) 3.5万〜5.5万円
1ページあたり(シナリオ込み・カラー) 4万〜6万円
企画・進行費 別途。ページ数や内容による
漫画以外のページのデザイン 別途(1ページ4万円前後の例あり)
印刷費 別途
制作期間 おおむね1か月前後

制作会社とクラウドソーシングの違い

「マンガ 制作 依頼」で検索すると、個人に発注できるサービスが多く出てきます。1ページ数千円から頼めることもあります。

価格だけ見れば、そちらが安いのは確かです。違いが出るのは次の点です。

クラウドソーシング・個人 制作会社
ストーリー設計 発注側が用意することが多い 取材して組み立てるところから
修正 回数や範囲が限られることが多い 工程ごとに確認の場がある
商用利用の権利 個別に取り決めが必要 契約で明確にする
描き手が途中で離脱した場合 一から探し直し 社内で引き継げる
紙面デザイン・印刷手配 別途 まとめて引き受けられる場合がある

内容が固まっていて、1〜2ページだけ必要なら、個人への発注でも十分なことがあります。何を伝えるかから一緒に考えたい、印刷物まで作りたいという場合は、制作会社のほうが結果的に早く済みます。

紙面デザインまで一緒に頼むと何が変わるか

漫画のデータだけを受け取ったあと、紙面デザインを別の会社に頼むと、次のような手間が発生します。

  • 漫画のデータ形式が、印刷に適しているかの確認
  • 漫画以外のページとの、色味・書体・余白の統一
  • 修正が出たときに、どちらの会社に戻すかの判断

一括でお引き受けする場合、これらは内部で処理されます。窓口が1つになることの効果は、金額よりも「決めごとの少なさ」に出ます。

作った漫画は、そのあとどう使うか

ここが、見落とされがちで、いちばんもったいない部分です。

漫画は制作費がかかります。だからこそ、1つの用途で終わらせない設計にしておくと、費用対効果が大きく変わります。

1本の漫画を紙とWebで使い回す

会社案内のために作った4ページの漫画は、そのままでは冊子の中でしか使われません。

最初から次のように計画しておくと、同じ制作費で使える場所が増えます。

  • 冊子:4ページをそのまま掲載
  • Webサイト:1ページずつに分け、スマートフォン向けに文字を大きく調整して掲載
  • SNS:印象的な1〜2コマを切り出して投稿
  • 営業資料:商談で見せる1枚に、該当の場面だけを使う

重要なのは、作る前に決めておくことです。あとからWeb用に作り直すと、追加の費用がかかります。ヒアリングの段階で「Webでも使いたい」とお伝えいただければ、そこを見込んだ作り方をします。

看板・のぼり・店内掲示への展開

店舗の場合、漫画に出てくるキャラクターを、そのまま店頭で使えます。

  • 入口の看板やのぼりに登場させる
  • 店内の掲示物(注意書き、案内、メニューの説明)に使う
  • ショップカードや包装に展開する

紙の漫画だけで終わらせず、キャラクターを店の顔として使い続けるという考え方です。この場合は、漫画を作る段階でキャラクターの全身図や表情のパターンを残しておくと、あとの展開が楽になります。

アークデザインの制作実例

格闘道場ALIVE様 漫画付き8つ折りパンフレット

格闘技の道場は、通ったことのない人にとって「どんな場所か分からない」場所です。強い人しかいないのではないか、続かないのではないか——そういう不安が、入会の前に立ちはだかります。

8つ折りパンフレットの片面全体。横一列に漫画が展開されている

そこで8つ折りパンフレットの片面を、まるごと漫画にしました。 広げると横一列に話が続き、道場の設備やクラスの様子を、案内されながら見ていく流れになっています。

もう片面には、クラスのスケジュール表と料金表を配置しました。「雰囲気を伝える面」と「条件を確認する面」を裏表で分けた構成です。折りたたむと手のひらサイズになり、持ち帰ってもらえます。

制作物はこちらの実績ページでご覧いただけます。

自社の会社案内パンフレット(発注する側も経験しています)

私たちは株式会社化のタイミングで、自社の会社案内パンフレットを漫画で作りました。

作る側であると同時に、「自分たちの何を伝えるか」を決める側でもありました。言いたいことが多すぎて絞れない、という壁にも実際にぶつかっています。

このときの経緯はオリジナル漫画制作もarkDESIGN!!にまとめています。社内のイラストレーターが実際に描いた漫画も掲載していますので、雰囲気を見ていただけます。

アークデザインの会社案内パンフレットに掲載した漫画。イラストとデザインで売上を上げる流れを、看板・メニュー表・ポスターを例に描いている

まとめ

マンガ制作を依頼するとき、押さえておきたい点をまとめます。

  • 向き不向きがある。 説明すると長くなるもの、感情が関わる判断に向く。伝えたいことが1つで短いなら、漫画にしなくてよい
  • 発注側が決めるのは「誰に何を伝えたいか」だけでよい。 ストーリーもキャラクターも、制作側で組み立てられる
  • 修正ができるのはネームの段階まで。 ここをじっくり見るのが、いちばん早く仕上がる方法
  • 費用はページ数で大きく変わる。 ページ数が増えると1ページあたりの単価は下がる
  • 作る前に「どこで使うか」を決めておく。 紙・Web・SNS・店頭まで見込んでおけば、同じ制作費で使える場所が増える

私たちアークデザインは、漫画の制作から、それを載せる紙面のデザインまでを一貫してお引き受けし、印刷の手配までまとめて承ります。社内にイラストレーターが在籍しているため、ご希望の絵のタッチに合わせた描き手を立てることもできます。

「漫画にしたほうがよいのか分からない」という段階からで構いません。伝えたいことをうかがったうえで、漫画が向いているかどうかも含めてご提案します。企業・店舗紹介漫画のページもあわせてご覧ください。