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街で見かけるポスター、手に取った商品のパッケージ、何気なく開いたパンフレット。
私たちの日常には、グラフィックデザインがあふれています。
しかし「グラフィックデザインとは具体的に何なのか」「Webデザインとどう違うのか」
と聞かれると、明確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、グラフィックデザインの基礎知識から種類、Webデザインとの違い
さらには制作を依頼する際のポイントまで、発注者の視点で分かりやすく解説します。
店舗や企業のブランディングを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
グラフィックデザインとは?単なる「装飾」ではないその意味
「デザイン」と聞くと、「見た目をきれいに整えること」「センスのある装飾を加えること」
といったイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、グラフィックデザインの本質は、単なる装飾とはまったく異なります。
情報を視覚的に伝えて、人の心を動かす「コミュニケーション手段」
グラフィックデザインとは、文字・色彩・図形・写真などの視覚的要素を組み合わせて、情報を効果的に伝える技術です。
その根底にあるのは「視覚によるコミュニケーション」という考え方。
つまり、伝えたいメッセージを的確に届け、見る人の心を動かすことがグラフィックデザインの役割なのです。
たとえば、新商品の発売を告知するポスターを考えてみましょう。
ただ商品写真と価格を並べるだけでは、通行人の目に留まりません。
キャッチコピーの配置、色の組み合わせ、余白の取り方——これらを戦略的に設計することで
「思わず足を止めてしまう」「欲しいと感じる」といった感情を引き出すことができます。
アート(自己表現)とデザイン(課題解決)の決定的な違い
グラフィックデザインを理解するうえで重要なのが、「アート」との違いを明確にすることです。
アートは、作り手の感情や思想を表現する「自己表現」が主な目的です。見る人がどう感じるかは二次的であり
作品そのものに価値があります。
一方、デザインは「課題解決」が目的です。クライアントが抱えるビジネス上の課題
「商品を売りたい」「ブランドを認知させたい」「情報を分かりやすく伝えたい」を
視覚的なアプローチで解決することがデザインの使命です。
この違いを理解していないと、「とにかくおしゃれなデザインにしてほしい」という曖昧な依頼になりがちです。
しかし本来、デザインには必ず「解決すべき課題」があり、その課題に対する最適解を導き出すことがデザイナーの仕事なのです。
印刷物からデジタルまで、生活のあらゆる場所に存在する
グラフィックデザインの起源は、古代の洞窟壁画やエジプトの象形文字にまで遡ると言われています。
その後、印刷技術の発展とともにポスターやチラシ、書籍などの紙媒体デザインが発達。
そして現代では、Webサイトやアプリ、SNS広告など、デジタル領域にまで活躍の場が広がっています。
電車の中吊り広告、コンビニに並ぶ商品パッケージ、街角の看板、企業のロゴマーク。
意識していなくても、私たちは1日に数千ものデザインに触れていると言われています。グラフィックデザインは、まさに現代社会のインフラとも呼べる存在なのです。
身近にあるグラフィックデザインの主な5つの種類
グラフィックデザインと一口に言っても、その種類は多岐にわたります。
ここでは、店舗や企業が発注する機会の多い5つの制作物について解説します。
自社に必要なデザインはどれか、イメージしながら読み進めてみてください。
広告・宣伝(ポスター、チラシ、パンフレット)
商品やサービスを宣伝するためのデザインです。ポスター、チラシ、フライヤー、パンフレット、DMなどが該当します。
広告デザインで重要なのは、ターゲット層への訴求力です。「誰に」「何を」「どう伝えるか」を明確にしたうえで、キャッチコピーの配置や印象的なビジュアルを設計します。見た目の美しさだけでなく、「なぜそのデザインが効果的なのか」を論理的に説明できることがプロの条件です。
新規オープンの告知チラシ、キャンペーン用のポスター、会社案内パンフレットなど、ビジネスシーンで最も需要の高いデザイン領域と言えるでしょう。
エディトリアル(雑誌、カタログ、書籍の表紙)
書籍や雑誌、カタログなどの編集物(エディトリアル)に特化したデザイン分野です。
エディトリアルデザインでは、文字の配置(組版)や画像のレイアウト、紙面全体の美しさと読みやすさが求められます。限られたスペースの中で情報を整理し、読者が自然とページをめくりたくなるような設計が必要です。
商品カタログ、会社の周年記念誌、飲食店のメニューブックなども、このエディトリアルデザインの範疇に入ります。
パッケージ(商品パッケージ、ラベル)
食品、化粧品、日用品など、商品の外装やラベルをデザインする分野です。
パッケージデザインの最大の特徴は、「店頭で選ばれるかどうか」が直接売上に影響する点です。
競合商品が並ぶ棚の中で、いかに目を引き、「思わず手に取りたくなる」魅力を表現できるか。
形状、材質、陳列状況まで考慮した立体的なデザイン思考が求められます。
オリジナル商品を販売する店舗や、OEM商品を扱う企業にとって、パッケージデザインはブランド価値を左右する重要な要素です。
CI・VI・ロゴ(企業のブランドロゴ、名刺、封筒)
CI(コーポレートアイデンティティ)やVI(ビジュアルアイデンティティ)は
企業やブランドの「顔」となる視覚的要素を総合的にデザインする分野です。
具体的には、ロゴマーク、シンボルマーク、ロゴタイプの制作に加え
それらを展開した名刺、封筒、レターヘッド、ショップカードなどのツール一式を設計します。
重要なのは「統一感」です。
どの媒体で見ても同じ印象を与えることで、ブランドイメージが確立され、認知度向上につながります。
新規開業や会社設立、リブランディングの際には、このCI・VIデザインから着手することをおすすめします。
サイン・空間(看板、案内表示、展示会ブース)
看板、案内サイン、展示会ブース、店舗の内外装に関わるデザイン分野です。
空間デザインとも重なる領域で、実際の設置場所や動線、視認性を考慮した設計が必要です。
たとえば店舗の看板であれば、「どの角度から見られるか」「夜間の視認性は確保できるか」「周辺環境と調和するか」
といった点まで検討します。
駅構内のサイン計画や大型商業施設のフロアガイドなど
利用者が迷わず目的地にたどり着けるよう設計する「情報デザイン」としての側面も持っています。
よくある疑問「グラフィックデザイン」と「Webデザイン」の違い
「グラフィックデザインとWebデザイン、どちらに依頼すればいいの?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
両者は重なる部分もありますが、明確な違いがあります。ここでは3つの観点から解説します。
媒体の違い(紙・実物 vs モニター・画面)
最も分かりやすい違いは「どこに出力されるか」です。
グラフィックデザインは、紙への印刷や実物としての製作を前提としています。
ポスター、チラシ、パッケージ、看板など、物理的に存在するものがアウトプットです。
一方、Webデザインはパソコンやスマートフォンの画面上で表示されることを前提としています。
この違いは、デザインの制作プロセスにも影響します。
印刷物は一度刷ってしまうと修正が効かないため、入稿前の確認が非常に重要です。
Webは公開後も修正が可能ですが、様々なデバイスやブラウザでの表示確認が必要になります。
色の表現の違い(CMYK vs RGB)
グラフィックデザインとWebデザインでは、色の表現方法(カラーモード)が異なります。
印刷物はCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)という4色のインクを混ぜ合わせて色を表現します。
これは「減法混色」と呼ばれ、インクを重ねるほど暗くなります。
一方、Webで使用するRGB(レッド・グリーン・ブルー)は光の三原色を使った「加法混色」で、光を重ねるほど明るくなります。
この違いにより、Web上で見ていた鮮やかな色が、印刷すると沈んで見えることがあります。
グラフィックデザイナーは、この色の変換を考慮しながらデザインを進めます。
情報の伝え方の違い(静的・一覧性 vs 動的・インタラクティブ)
情報の伝え方にも大きな違いがあります。
グラフィックデザインは「静的」で「一覧性」に優れています。
ポスターやチラシは、一目で全体を把握できます。
ページをめくるパンフレットでも、情報の提示順序はデザイナーがコントロールできます。
一方、Webデザインは「動的」で「インタラクティブ(双方向的)」です。
ユーザーがクリックやスクロールによって情報を取得し、動画やアニメーションで情報を伝えることも可能です。
ただし、ユーザーの行動によって見る順序が変わるため、どのような導線で情報を見せるかという「UI/UX設計」の視点が重要になります。
効果的なグラフィックデザインを作成するために必要な3要素
近年はCanvaなどのツールの普及により、デザインの専門知識がなくてもそれなりの制作物を作れるようになりました。
しかし、「素人が作るデザイン」と「プロが作るデザイン」には明確な差があります。その差を生む3つの要素を解説します。
レイアウト(情報の優先順位と視線の誘導)
レイアウトとは、紙面上に文字や画像などの要素を配置することです。
ただ並べるだけではなく、「情報の優先順位」と「視線の誘導」を意識することがプロの技術です。
人の目は、左上から右下へ(Zの字)、あるいは上から下へ(Fの字)と動く傾向があります。
この視線の流れを利用して、最も伝えたい情報を目立つ位置に配置し、読む順序を自然にコントロールします。
また、余白(ホワイトスペース)を適切に設けることで、情報が整理され、読みやすさが向上します。
素人のデザインにありがちな「詰め込みすぎ」「優先順位が不明確」といった問題は、このレイアウト設計の欠如から生まれます。
タイポグラフィ(文字のフォント選びと配置の美学)
タイポグラフィとは、文字の書体(フォント)、サイズ、行間、字間などを調整し、読みやすく美しい文字組みを作る技術です。
フォントには、それぞれ固有の印象があります。
明朝体は「上品」「伝統的」、ゴシック体は「モダン」「力強い」、手書き風書体は「親しみやすい」「カジュアル」など。
伝えたいブランドイメージやメッセージに合ったフォント選びが、デザインの印象を大きく左右します。
また、行間や字間の微調整は、可読性(読みやすさ)に直結します。
プロのデザイナーは、1ポイント単位で文字組みを調整し、ストレスなく読める紙面を設計します。
配色(色彩心理を利用したイメージ操作)
配色(カラーデザイン)は、デザイン全体の印象を決定づける重要な要素です。
色には心理的な効果があります。
赤は「情熱」「緊急性」、青は「信頼」「冷静」、緑は「自然」「安心」、黄色は「明るさ」「注意喚起」といったイメージを喚起します。
この色彩心理を活用し、ターゲット層やブランドイメージに合った配色を選定することがプロの仕事です。
また、色の組み合わせにも法則があります。補色(反対色)を使ったコントラストの強い配色、類似色を使った調和のとれた配色など、目的に応じて適切な配色理論を適用します。
外注前に知っておきたい!デザイン制作の基本的な流れ
グラフィックデザインを外注する際、制作の流れを理解しておくと、スムーズなやり取りが可能になります。ここでは、一般的な制作フローを4つのステップで解説します。
ヒアリング(目的・ターゲット・コンセプトの明確化)
デザイン制作の最初のステップは、ヒアリングです。デザイナーがクライアントから以下のような情報を聞き取ります。
制作物の目的は何か(認知向上、販促、ブランディングなど)。
ターゲット層は誰か(年齢、性別、職業、趣味嗜好など)。伝えたいメッセージやコンセプトは何か。
競合他社のデザインとの差別化ポイントは何か。予算や納期はどの程度か。
このヒアリングの質が、最終的なデザインの質を左右します。
発注者側も、できるだけ具体的に要望を伝えることが重要です。
「おしゃれな感じで」ではなく、「30代女性に響く、上品でナチュラルな雰囲気」といった具体的なイメージを共有しましょう。
ラフ案・デザイン制作(IllustratorやPhotoshopでの作業)
ヒアリング内容をもとに、デザイナーがラフ案(ラフスケッチ)を作成します。
この段階で、レイアウトや配色、全体の方向性を確認します。
ラフ案の承認後、Adobe IllustratorやPhotoshopなどの専門ソフトを使って本制作に入ります。
Illustratorはロゴやイラスト、レイアウトデザインに、Photoshopは写真の加工や合成に使われることが多いです。
この段階では、複数のデザイン案を提示してもらい、比較検討することも可能です。
校正・修正(誤字脱字や色のチェック)
デザイン案が完成したら、校正の段階に入ります。
誤字脱字がないか、電話番号や住所などの情報に誤りがないか、色味が意図通りか、画像の解像度は十分かなど
細かくチェックします。
特に印刷物は、一度刷ってしまうと修正が効かないため、この校正作業が非常に重要です。
修正指示は、「もっと目立たせて」といった曖昧な表現ではなく
「タイトルのフォントサイズを2ポイント大きく」「背景色をもう少し明るいグレーに」など
具体的に伝えることがスムーズな進行のコツです。
入稿・印刷・納品
校正が完了したら、印刷会社へデータを入稿します。
入稿データは、印刷会社の仕様に合わせて作成する必要があります。
カラーモードはCMYKか、塗り足しは適切か、フォントはアウトライン化されているかなど、専門的なチェック項目があります。
これらの作業はデザイナーが行いますが、入稿から印刷までのスケジュールは事前に確認しておきましょう。
印刷が完了したら、納品となります。
デジタルデータが必要な場合は、AI(Illustrator形式)やPDFなどのファイル形式での納品も依頼できます。
店舗・企業のブランディングなら「トータルデザイン」ができる会社へ
ここまでグラフィックデザインの種類や制作の流れを解説してきました。
店舗や企業のブランディングを本格的に進めるなら、「トータルデザイン」に対応できる会社への依頼をおすすめします。
ロゴ、チラシ、Web、看板…バラバラに発注すると「ブレる」リスクがある
多くの企業や店舗では、ロゴは○○社、チラシは△△印刷、Webサイトは□□制作会社、看板は地元の業者…と
それぞれ別の会社に発注しているケースが見られます。
この方法には2つの問題があります。
1つ目は、発注者の負担が大きいこと。
それぞれの業者と打ち合わせを行い、納期や予算を調整し、デザインの方向性を伝える作業が発生します。
2つ目は、デザインテイストがバラバラになるリスクがあること。
各業者がそれぞれの解釈でデザインを進めるため、「ロゴは洗練されているのに、チラシは野暮ったい」「Webと看板で色味が違う」といった不統一が生じやすくなります。
ブランドの印象は、あらゆる顧客接点の積み重ねで形成されます。
デザインにブレがあると、ブランドイメージの確立が難しくなります。
アークデザインなら「イラスト」から「店舗装飾」まで一括対応が可能
アークデザインは、グラフィックデザインを中心に、イラスト制作から店舗装飾、Web制作まで幅広く対応できるデザイン会社です。
ロゴ・名刺・チラシ・パンフレットといった紙媒体から、看板・サイン・店舗の内外装
さらにはWebサイトやSNS用のビジュアルまで、一社で完結できることが強みです。
特にイラスト制作力に定評があり、オリジナルキャラクターやイラストを活用したブランディングにも対応しています。
窓口が一本化されることで、打ち合わせの手間が削減され、デザインの意図やブランドコンセプトが正確に共有されます。
一貫した世界観を作る「トータルプロデュース」で集客効果を最大化
アークデザインが提供する「トータルデザイン」の最大の強みは、一貫した世界観を構築できることです。
ロゴマークを起点に、配色・フォント・ビジュアルスタイルなどのデザインルールを策定。そのルールに基づいて、すべての制作物を統一したテイストで展開します。お客様がチラシを見て来店し、店舗の看板を見て、店内のPOPを見て、Webサイトを見る——そのすべてで同じ世界観を感じられることで、ブランドへの信頼感と記憶定着が高まります。
「デザインの力で、ビジネスを加速させたい」とお考えの方は、ぜひアークデザインのトータルデザインサービスをご検討ください。
まとめ
グラフィックデザインは、単なる「見た目の装飾」ではなく、ビジネス課題を視覚的に解決する「コミュニケーション手段」です。
この記事では、グラフィックデザインの基本的な考え方から
5つの主要な種類(広告・エディトリアル・パッケージ・CI/VI・サイン空間)、Webデザインとの違い、プロのデザインに必要な3要素(レイアウト・タイポグラフィ・配色)、そして制作の流れまで解説しました。
店舗や企業のブランディングにおいて、デザインへの投資は「コスト」ではなく「将来への投資」です。
一貫した世界観を持つデザインは、お客様からの信頼を獲得し、競合との差別化を実現し、長期的な集客効果をもたらします。
「ロゴを作りたい」「チラシを刷りたい」「看板を設置したい」——
そうした個別のニーズをお持ちの場合でも、まずは全体像を俯瞰できるデザインのプロに相談することをおすすめします。
トータルでブランディングを任せられる会社に依頼することで、発注の手間が省け、デザインの統一感が生まれ
結果としてビジネスの成長につながるはずです。
グラフィックデザインの力で、あなたのビジネスを次のステージへ。